《MUMEI》
玉華
「すごい・・」
宿屋「玉華」の二階の窓から教会の辺りで吹き上がった白光を見上げながら呟く。
今までの結界強化儀式を見たことがあれば、変だと思う事実も狩月から見れば綺麗な光景にしか写らない。
リースから外出を控えろと言われ、従っているのだが・・街はお祭り。
「う〜〜ん・・何か理由があるんだろうケド、外出したいな・・」
窓の外を眺めながらそんな独り言を繰り返していた。
と・・なにやら大きな影が見えた。
(・・・??)
遥か上空から巨大な柱が堕ちてきているのが見えた。
街の上空で柱に見えていたモノは大きく翼を広げ、火炎を吐き出した。
「え・・・」
その光景に呆然としている狩月の横を龍が吐き出した火炎によって巻き起こった熱風が通り過ぎていく。
その風を合図としたかのように、次々と悲鳴があがる。
「・・・何が・・起こってるんだ?」
嫌な予感がして、一階に駆け下りる。
一階では、同じようにその光景を見ていた数人が、外へと駆け出していく所だった。
「何があったんですか!?」
「結界が破られた・・みたいだ。モンスターがどんどん街に侵入してきてやがる。」
冒険者風の男は荷物を担ぐと、外へと駆け出していった。
テレパスが来たことを告げる音が鳴る。
「テレパス 無事なら玉華に集合!!」
手元にウィンドウが展開し、文面を確認すると、琴からのテレパス。
「・・・」
ウィンドウを展開したまま呆然と立っている狩月。
「荷物、持ってきておきな。すぐに避難できるようにしとかねぇと・・怪我じゃすまなくなるぞ!!」
店主は狩月の肩を叩くと、店の奥へと向かっていった。
「はい。」
小さく返事をすると自室へと戻った。
(荷物・・荷物・・)
大して量は無い。すぐにまとめて一階へと戻る。
「!緊急 現在、リーベル内に多数のモンスターが侵入、守護騎士が迎撃していますが、ただちに避難してください。東門及び南門付近にモンスターが集中している模様です。」
緊急でテレパスが飛ぶと同時、外からもアナウンスが聞こえ始める。
一階の食堂には店主が次々と武器や医療品などを並べていた。
「ここにあるのは好きに使ってくれ!」
店主が怒鳴り声を上げながら次々と並べていく。
「お前も持っていけ!生き残って貰わないと宿代払ってもらえないからな。」
頼もしい笑顔を見せながら狩月の肩を叩く。
「はい!」
返事をしながら並べられた物を見ていく。
(近接武器は・・そんなに持っても邪魔になる・・なら遠距離武器を。)
幾つか武器を選んで収納していく。収納に使っているこのアイテムも並べられていた物の一つ。
食堂に並べられた武器は、カナリの量で、種類もそこらの武器屋なんかよりはずっと多い。
剣や槍は当然として火薬式の銃器、炸裂弾・・などなど
(戦争でも始める気だったのかな・・)

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