《MUMEI》 番外編―同窓会Y―「はあ?ふざけんなよ早紀!」 凌一は机を強く叩いた。 「ムリだよ!あたし妊婦だもん!」 雛が高々と手を挙げた。 「あたしだって‥妊婦になるよ‥いつか‥」 理由を無理矢理作る詩織。 みんなの反応を見て早紀は、少し悲しそうに俯いた。 「‥おい‥早紀‥泣くな‥」 真っ先に湧介が言う。 その声を聞いて、早紀の口角が少し上がった様な気がした。 早紀はゆっくり顔を上げて、湧介の方を向いた。 「じゃあ‥湧介はやってくれるのね‥」 その言葉に湧介は石になった様に固まった。 (可哀相にな湧介‥) 俺が思っていると、酔っ払いの凌一が俺の腕を掴んで、高々と挙げた。 「湊しゃんも、やるしょーれーす」 「はぁ!?」 「頑張れぞ!湊しゃん」 凌一は完全に酒に飲まれたらしく、顔が真っ赤だ。 「ふざけんな!だったらてめぇもやれよ!酔っ払いめ!」 「嫌れしゅ〜僕はまだまだ飲むれしゅ〜」 俺はムカついて、履いていたスリッパで凌一の頭をはたいた。 「はふぎゃ!」 凌一は変な声を出して、気絶したフリをした。 俺はそれを無視して立ち上がった。 「仕方ねぇ…男だけやるぞ」 俺の言葉に、女子と湧介は喜び、男子は目が飛び出そうなぐらい目を開けた。 「…13人だからな…鬼…3人か…やりたい奴は言え」 「湊カッコイイ〜」 愛美里達が声を上げる。 「お…俺やる…」 大輔が手を挙げた。 「他には…?」 俺が言うと、雄太郎と裕也が手を挙げた。 「決まりだな‥早紀、後は頼むぜ」 俺は早紀に頼んで腰を下ろした。 早紀の説明によると、時間は15分間、会場は学校の敷地内ならどこでもいいが、外のみ。 鬼は、観客である女子から情報を得ることが出来る。 捕まったら即失格。最後まで逃げ切れたら賞品。鬼は、全員捕まえたら賞品。 夜のグラウンドには、柔らかな風が吹いていた。 先生と京都ちゃんは、嬉しそうに椅子に座って、俺達を見ている。 「よ〜い」 早紀がストップウォッチを掲げる。 逃げる奴らは、走り出す構えをする。 「ドン!!」 回りは一斉に走り出したが、俺は闇に隠れるように木に紛れた。 前へ |次へ |
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