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《MUMEI》 妊娠仕事に行かない亮を責める事もせずにひたすら自分が稼ぎに行き、散らかった部屋を片付け料理を作る。 もう限界な位クタクタなのに毎晩のように求める亮に、私はけなげに応じた。 大袈裟なくらい声をあげてのけぞり、必死に亮の背中にしがみつく。これが亮の一番興奮するシチュエーションなのだ。 当然というか必然的に私は妊娠した。妊娠を告げるとき私は、結婚してるにもかかわらずひどきビクビクしながら亮の顔色を伺った。 「産んでくれよ」 亮は、ひとことそう言うとそそくさと布団に潜り込んだ。 嬉しい。よかった。産んでいいんだ。 亮は、次の日から何事もなかったように会社に行きだした。 晴天の青空に鯉幟が泳ぐ光景に浸りながら私は、入籍してから今までの二ヵ月間の悪夢を穏やかな気持ちで振り返り、セピア色に変えていた。結局バイトもつわりを理由にすぐ辞めてしまった。 「もう二度とあの会社に戻れないよ。」 「大丈夫。俺が彩と赤ちゃんまとめて面倒見るから。俺は、父親になるんだから。」 ようやく自覚が出て、実感が湧いてきたのか亮は、意気揚々としていた。すっかり頼もしい男になった亮に私は、完にした。ようやく新妻の幸せを手に入れた私は、完全に酔いしれていたのだった。 妊娠三ヵ月の定期検診。超音波写真を見ると赤ちゃんは、いっちょまえにちゃんと丸まって人の形をしていた。 「心臓の音も聞こえたんだよ。もう、感動しちゃって目頭が熱くなっちゃった。」 「男の子?女の子?」 「まだ解んないよ。亮ったら気が早いんだから。」 「明日、姓名判断の本買って来るからさ名前考えよう。」 今日も五月晴れの空を眺めながら洗濯物をやっつける手が軽々しかった。比較的今日は、つわりも感じなかった。気が付くと鼻歌なんか口ずさんだりなんかして。ひらりと亮のズボンから紙切れが落ちた。それは、ピンク色の名刺でマユミという名前とご丁寧に携帯の番号まで記されていた。 前へ |次へ |
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