《MUMEI》

玄関のドアが僅かな音をたてながら閉じきる頃には、
俺達はきつく抱き合いながら唇を重ねていた。


しかも俺より裕斗の方が積極的で、俺の方がシューズボックスに追い詰められた。


「会いたかった…」





裕斗は俺の肩に顎をのせながら背中に腕を回し、溜め息まじりに吐いた。





「バカ、何言ってンだよ…、それは俺の台詞だって…」








シャワーを浴びたばかりの裕斗はテレビを見ながらソファに座ってる。


「ほらよ」




俺はペットボトルを渡してやり隣に座る。



「有難う」




裕斗はキャップを開けて飲みだした。






俺は裕斗の肩に下がったバスタオルをするっと取りあげ、雑に拭いただけの滴が落ちる髪を拭いてやる。


「もー風邪ひくってよ、ゆうちゃんは本当いっつも雑だよなぁ」


「雑じゃないよ、ちゃんと拭けてるもん」





珍しく露骨に拗ねている表情。





それだけ気を許してくれてるんだって思うと、何だか可愛いくて仕方がない。

「ほら、首に垂れなくなった、ボサボサになっちまったけど」





俺が手櫛で髪を撫で整え始めると、今度はぽっとした表情で黙って俺を見ている。






コロコロ表情が変わって本当…飽きねえ。





「な、エッチしよっか…」





「…うん、する」





前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫