《MUMEI》
相談
マキがいきなり変なこと言うから、
調子狂った!!


「…じゃ、じゃあ!
あたし、ちょっと1年校舎行ってくる!!」

「気をつけて〜♪」


あたしの調子狂わせといて、マキは気楽なもんだ…

プリントを持って、教室を出る。

1年校舎に続く廊下を歩いている間、
マキの言葉が頭から離れなかった。


―…梶野に恋、

…なんて、ありえない!!


しばらく歩くと、1-Aの教室に着いた。


あたしがりかちゃんの姿を探していると、


「相原せんぱい!?」


背後から可愛い声が。

振り向くと、りかちゃんが走り寄って来た。


「…りかちゃん!」

「せんぱい、どーしたんですか??」

「あ、これ、梶野が渡しといてって」


そう言いながら、プリントを手渡す。


「わざわざありがとうございますー!!」

「どういたしまして」


やっぱり、間近で見ると可愛いな…


「パンフレット作成…って、これ、
看板係の仕事ですかー??」


プリントに目を通し、りかちゃんが尋ねる。


「え??…えーっと…看板の仕事、終わりそうだからじゃない??」


あたしたちの仕事は、あと看板の色塗りだけで、
今日には終わりそうだ。


「梶野せんぱい、しっかりしてますもんね〜」


りかちゃんがにこにこと感心の声をあげる。


「…そーかな??あいつ、いっつもふざけてるよ??
ウソツキだし!!」


苦笑しながら答える。


「そんなことないですよー??
…笑ったときの八重歯と、右のほっぺのえくぼが素敵です!!」


うっとりと言葉を返すりかちゃん。


…よく見てるなあ…
てか、それ、今の話にカンケーないんじゃ…



「―…あの、せんぱい!!」


いきなり、りかちゃんの顔つきが変わった。


「な…なに??」

「あの…相談、なんですけど…」

「…う、うん」


なんか、緊張してきた…





「りか、梶野せんぱいのこと…
好きになっちゃったみたいなんです…!!」





いきなりの告白に、
返す言葉がなかった。

りかちゃんは言葉を続ける。


「だから、あの…相原せんぱい、
梶野せんぱいと仲いいですよね??
…協力、してくれませんか…??」


そう言ってあたしを見つめる
りかちゃんの瞳は潤んでいて、


―…ほんとに可愛いな…

男の子だったら、イチコロだろーな…


なんてことを、ぼんやりと思ってしまった。



『梶野のこと、好きなんじゃない!?』


なぜかマキの言葉を思い出してしまい、

慌てて首を振って、その声を振り払った。


「…ごめんなさい…
図々しかったですよね…」


あたしが首を振ったのを
否定だと捕らえたらしい。

りかちゃんが、寂しそうな表情で俯く。


「あ!ううん!違うの!!」


慌てて弁解する。


「え…??―…じゃあ―…」

「…うん!!協力するよ!!」


にっこりと微笑みかけると、


「うわあ!!
…ありがとうございます!!!」


りかちゃんは、飛び上がって喜んだ。


―…これでいいんだ。

可愛い後輩が、こんなに喜んでくれてる。

あたしは、別に梶野のこと好きなワケじゃないし。


―…だからほら、協力だってしてあげられる。


―…マキがいきなり変なこというから、
ちょっと混乱しただけ!!


あたしが梶野のこと好きだなんて―…


そんなでたらめ、梶野だって笑うに決まってる―…


次々に湧き上がる想いを自己処理しながら、


あたしは

自分の胸を
そっと、押さえた。

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