《MUMEI》 中西泰造、真紀私達は老夫婦である 思い起こすのは娘、奈津の事である 私達の娘、奈津は不治の病に侵され、一生このまま治らない 私達は奈津の看病に苦しんだ 結婚も出産も奈津には無い 私達は奈津の看病に憔悴しきっていた 泰造が妻の真紀に ≪もう終わらせないか?≫と言った ≪あなた・・≫ 二人は奈津に最後の別れを言った ≪奈津、お母さんよ≫ ≪奈津、お父さんだ、これからお前を楽にしてやるからな≫ 泰造と真紀は奈津を車椅子に乗せた 泰造と真紀は大通りに出た 大型車が来る ≪奈津、行きなさい≫と言って二人は、奈津の車椅子を押した ≪奈津、幸せになりなさい≫ 奈津はダンプに跳ねられ死亡した ≪やっと・・やっと開放された≫ ≪奈津、ごめんなさいね≫ 二人は別の塀の中に居る ≪奈津・・・≫ でも後悔していない 不思議と気持ちは楽だった あの生活を考えれば、ここの暮らしの方が全然良かった 夫婦各々が別の塀の中で ≪ここで生涯を終えるんだな≫と思っていた 二人は呟いた ≪幸せだ≫ ≪アナタも来てみませんか?≫ 前へ |次へ |
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