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《MUMEI》 浮気会社から帰って来た亮は、赤ちゃんの名前の本を三冊も買い込んできて満面の笑みを浮かべていた。 「重たい物とか持っちゃダメだぞ。初期って流産しやすいんだろう?」 どこで聞いてきたのか今までにない気の使い方だ。 夜、布団に入った時私は、亮に「抱いて。」とせがんだ。何だかいいようのない不安が押し寄せてきて、今夜は亮に包まれていたかった。 「馬鹿。こんな大事な時期に流産でもしたらどうするの。」 じゃ、今まで仕事と家事で疲れていた私を容赦なく攻めてきた亮は、何? 私は、子供を産むための道具? 私の気持ちは? (体の処理は、マユミで済ましているからいいんだ。)私の心の中で悲痛な叫びがこだましていた。 家に無言電話がかかってくるようになった。一日に何回も執拗に鳴る電話のベル。 毎日赤ちゃんの話題ではしゃいでいる亮に無言電話の事は、ふせていた。妻の妊娠中に夫が浮気なんて、よくある事かも知れない。十人妊婦がいたら一人か二人位は、妻に内緒でこっそりやってるのかもしれない。 別に私は、物分かりがいい女でも良妻賢母でもない。 亮は、愛される事には貪欲だ。そういえば、私と同棲する時の事。 私達が付き合いだしたのは、大学三年生の時。当時、教師になりたかった私は、大学の勉強の他に家庭教師のバイトを何本か掛け持ちしていて忙しい毎日だった。寝る間のなかった私に必死に同棲を迫ったんだっけ。 亮はというと特に何かに没頭するでもなく将来の事を真剣に考えてる風でもなく親の仕送りだけで、気楽な大学生活を送っていた。典型的な『とりあえず大学入った組』 だから同棲もイマイチ踏み込めず、適当に言葉を濁していた。そうしたら 「俺もバイトするから彩は、バイト辞めていいよ。」 とかいっちゃって。それには、さすがにグラッときちゃった。 だけど結婚する訳でもないのにダラダラ同棲なんて嫌だなぁって気が進まない私の態度を見兼ねて、まず亮は玄関でとうせんぼを決め込んだ。 前へ |次へ |
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