《MUMEI》
表彰
「ですので、私は彼らを表彰したいと思います」
 反応のない会場をまったく無視して、自分に酔ったように竹山は続けた。
ユウゴとユキナは事の成り行きを見守っている。

 竹山はそばに控えていた係の男に何か言い付けると、まずユキナの方へ向き直った。
「えー、表彰と言いましても特に賞品や特典を与えるようなものではありません」
「……じゃあ、なんなのよ?」
敵意剥き出しでユキナが言う。
「あなたは、彼に誘われてあの行為に参加した。そうですね?」
「え……」
竹山の質問にユキナは言葉を詰まらせた。
「それとも、あなたが先導して警備隊や受験者たちを攻撃したのですか?」
「その質問になんの意味があるんだよ?」
様子を見ていたユウゴが思わず口を開いた。
「答えによって、待遇が変わります」
当然のように竹山は言い放った。

 ユウゴとユキナは相談するように顔を見合わせる。
しかし会話はない。
しばらくお互いの目を見つめて、やがて何かを決めたようにユキナが口を開いた。
「わたしが……」
「俺が先導したんだよ」
ユウゴがユキナの言葉を遮った。
「ユウゴ?」
「こいつは仕方なく俺に付き合っただけだ」
「ユウゴ!」
「いいから、黙ってろ」
ひどく冷静なユウゴの声に、ユキナは黙り込む。
「やはり、そうですか」
予想通りだったのか、竹山は満足そうに頷いた。

「では、あなた」
「わたし?」
「そう。あなたはこれまでと変わりない生活を送ってください」
「え、いいの……?」
「ただし、少しでも犯罪を起こしてしまった場合、裁判の余地なく極刑となります」
「……極刑」
ユキナの呟きが聞こえる。
「そして、あなた」
竹山はユウゴの顔を覗き込んだ。
だんだんと楽しくなってきたのか、竹山の顔にはうっすら笑みが浮かんでいた。

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