《MUMEI》
残る理由。
「少しは時間稼げた・・よね?」
想花が座り込みながら誰にとも無く呟く。
「近場に居たのは全滅させたな。」
怪我の手当てを受けながら答える剣士。その言葉に安心したように他の者も座り込んでいく。
「狩月、怪我とかしとらん?」
狩月の横に座った巴は符の残存枚数を確かめながら、声をかける。
「全身が痛い・・筋肉痛の酷い状態みたい・・」
大の字に転がっている狩月、呻く様に話す。
「「ブースト」をあんな長時間使ったらそら、そうなるよ。」
符を、狩月の額に貼り付けながら笑う巴。
「「ブースト」って言うのか・・あれ。」
「・・・知らんと使ったんか・・」
呆れたような笑い。
「前に使ってるの見て、真似しただけ・・あ〜・・なんか痛みが和らいできた・・」
「疲労回復と、魔力の回復、痛みの緩和。」
「こんな紙切れでイロイロできるんだ・・・・・・魔法陣?」
中空に魔法陣が浮かんでいる。
「ぇ?・・・・・・・・最悪や!休んでる場合や無い。次が来る!!!」
しばらく中空の魔法陣を見ていた巴が周りで休んでいる人々に声をかける。
「嘘だろ・・あんな大群を潰した後だって言うのに・・」
「転送・・魔法か?」
「この前の儀式の時と同じ・・・魔法陣だ・・」
「召還魔法・・くっそ!!俺は逃げるからな!!」
一人が逃げ出せば後は、一瞬だった。悲鳴が悲鳴を呼び、次々と街の外へ向かって逃げていく。
「・・狩月、どうする?」
玉華跡に残ったのは狩月、想花、巴の三人を含め5人。
魔法陣は次第に強く光を放ち始める。
「お前等も逃げたほうがいいぞ。」
玉華の店主が諦めたように声を出す。その隣に座る男も大きくため息をつく。
狩月、想花、巴はまだ戦える状態だが、残りの二人はすでにボロボロ。
「二度目だもんなぁ・・流石に奇跡も品切れか・・」
「はっはっは・・有事の際にと思って揃えた武器も意味は無かったって訳か・・」
前回の結界強化儀式の際、この辺り一帯はモンスターに蹂躙されそうになったが、前団長以下、数名の騎士の活躍により、被害が少なかった地域である。
「・・想花。待ち合わせ場所ってココだよな?」
「うん、そうだよ〜」
顔を見合わせて笑う二人。
「ボンカー達が来るまで動けないよな〜・・」
「確かに、こっちには迷子の名人狩っちゃんが居るしね。下手に動いたらまた迷子になってそうだもんね〜」
立ち上がると、想花は、詠唱を始める。
「って訳で、もうしばらくはココに居ます。」
店主に向かって笑いかける狩月。
「何を言ってるか解ってるのか!?ここに居たら死ぬんだぞ!!」
店主が声を荒げる。隣の男も「すぐに逃げろ」と眼で訴えている。
「あ〜・・仕方ない二人やね・・」
店主達に符を投げる巴。
ボン!!
白い霧が発生し、店主達が意識を失った。
「トモ?」
突然意識を失った店主を横目に、尋ねる狩月。
「眠らせただけやよ。この二人はウチが安全な所まで運ぶから、ボンカー達が来たら速攻で逃げや。」
苦笑しながら巴は眠っている二人を符によって宙に浮かべる。
「・・・・死なないでね。もう嫌だから・・」
最後に一言呟くと街の外へと走り出す巴。宙に浮いている店主達もソレに続いて飛んでいった。

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