《MUMEI》

許されぬ恋だと

叶わぬ想いだと

何度、何度
自分に言い聞かせてきただろう。

自身の気持ちを無視できなくなるまで膨らんでしまった感情を。
それでもまだ、押さえ付けて。

秘める想いのその先に、何が待つと云うのか。


佑哉(ユカナ)…――。











「お義兄さん」


お義兄さん。お義兄さん、と。

義妹が俺をそう呼ぶようになったのは、冬も終わりに近くなった2月。

まだ、一月と少しばかり。


「何だ」

「また、眺めているのですね」


目線の先には大木。

古い古い、桜の木だ。


「好き…なんですね」

「ああ」


この季節だ。

桜は今が見頃だろう。

――…普通なら。


「咲かないのに、ですか?」


そこで初めて、俺は義妹を見る。

縁側に座る俺の少し後ろで華奢な身体を折り曲げて、しゃがみ込んだまま桜を眺めていた。

もうずっと昔から、咲かずに佇むその大木を。

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