《MUMEI》
倒れた八神
八神の回りに屋根からたくさんの影が降りて来た。その影は、佐々木社長の周りに集まった。口元にマスクの様なものがある。

「ご苦労」
佐々木社長の低い声が響く。
「社長!意識は確かでございますか?」
「ああ‥」
意識を失うということは、何か薬を使ったのだろうか‥?

「しかし、なんですか?このガキ?まだ、中坊ですよね?」
「ああ、結構昔から目を付けられていてな、早く摘みたいと思っていたのだ」
佐々木は、カメラに目を向けて、ニヤついた。
晴香はびくっとした。

「社長っ、このガキどうします?」
佐々木社長は考える振りをして、再びカメラに目を向けて、ニヤついた。

―晴香には嫌な予感がした。

佐々木社長は、少しの間を空けて口を開いた。
「殺さない程度に痛め付けて、砂浜にでも捨てておけ」
佐々木社長は再びカメラに目をやった。

(あたしに教えてるみたい…)
晴香はふと思った。

「了解しました。」
屋根から降りて来た人達は、深々と頭を下げて、引きちぎるようにマスクをとった。

―ドカッ バンッ
八神が蹴飛ばされて、壁に叩き付けられた。

―ドンッ
「がはっ」
八神は口から血を吐いた。

晴香は手で目を覆った。
体ががくがく震えていた。

晴香は、モニターに映し出される酷い映像を想像して、胸が締め付けられる様に痛み、涙を流した。

「八神ぃ…」

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