《MUMEI》

オレはマシンを押して、誰も居なくなったコースをトボトボ歩いていた。


夏の日差しが容赦なく照り付けてくる。

とても惨めな気分だ…


幸いにも低速の転倒だったので、マシンは致命傷となるようなダメージは負っていなかった。

だがよく見ると無惨な傷跡が、車体のあちこちに生々しく刻まれていた。

シートと両サイドのカウルには、ザラりとした擦り傷が付いている。

スクリーンは割れ、アッパー・カウルの一部にもヒビが入っていた。

おそらくマシンは、コース上で1回転したのだろう。


(ゴメンな…痛かったろ…。)

オレは NSR に謝った…。

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