《MUMEI》
王様ノ言葉
紬はドレスの裾が床に付かないように気を配りながら、長い廊下を一人歩いていた。

そして、大きな赤い扉の前で立ち止まった。
扉の両端には見張り兼ドアマンの男がいた。

紬は小さく息をついた。
「父上、私です。」
「入りなさい。」
低い声が部屋に響き渡ると、扉の両端の男が扉を開けた。

「失礼します。」
紬は小さく頭を下げた。


王様は何も言わず小さく手招きをした。

紬は王様の前まで行くと、ドレスをつまみ、ドレスの裾を浮かせ膝を微かに曲げて、
「御呼びでしょうか?父上。」
と、言った。

王様は僅かに口元を吊り上げた。

―なにが可笑しい。紬は表情一つ変えずに王様を睨んだ。

「お前もそろそろ天使を決めんとな。なあ?」
「はい…。」
紬が力無く答えると、
「運命を変えることは出来ん」
王様が強く言った。
「選ばれない奴は、そ奴の努力が足りんからだ。」

王様の言葉が紬に重くのしかかる。

重い空気に耐え切れず、紬は軽く会釈をして部屋を出て、自分の部屋へと体を向けた。

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