《MUMEI》
選択肢二つ
「なんだよ……」
僅かに顔を引き攣らせながらも、ユウゴは竹山を睨み返す。
「あなたには……そうですね」
わざとらしく考える仕草を見せて、竹山は右手の指を二本立ててユウゴの顔に近づけた。
「あなたには二つの選択肢を差し上げます」
「二つ……?」
「そう」
竹山は頷きながら、今度は指を一本だけ立てる。

「まず一つ目。このプロジェクトでの行いを反省し、これからの一生、プロジェクトのために働いてもらいます。もちろん休日なし、給料なしでね」
「……奴隷かよ。趣味悪いな。それで、もう一つは?」
「二つ目は……」
竹山は指をもう一本立てた。

「このまま、この場で死刑」

 会場が一気に騒がしくなった。
その声を聞く限り、喜んでいる人たちが多いようだ。

「さあ、どちらにします?」
不気味に笑う竹山。
気がつけばユウゴのすぐ傍に、拘束器具を持った男たちが準備している。

「……どちらにって」
「他にないわけ?もっとマシな選択肢」
ユキナが言うが、竹山はまったく反応しない。
ただ、楽しそうにユウゴの返答を待っている。

「死ぬか、生きるかってか」
「ええ。寛大な私だからこそ、生きる選択肢を与えたんですよ」
「へえ、そうかい。そりゃ、どうも」
言いながら、ユウゴは何かを確認するようにチラリと自分の後ろを見た。
 後ろには少しのスペースを開けて客席が広がっている。

「ユキナ……」
「え、なに?」
「たった四日間の付き合いだったけど、割と楽しかったぜ」
「ユウゴ?」
「あとで、サトシにもよろしく言っといてくれよ」
「ちょっと、ユウゴ!まさか……」
ユウゴは口元に笑みを浮かべて竹山を見た。
「おい、じいさん!よく聞けよ!俺が決めた選択肢は……」
怒鳴りながらユウゴはその場にしゃがみ、力一杯後ろ向きのままジャンプした。

「これだ!!」

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