《MUMEI》
偽物ノ天使
契約天使は、結局は紬の独断で決まる。
王様もコレだけは指図する事が出来ない。

「あたしそんなこと決める自信無いよ。」
周りに居る誰にも聞こえないほどの小さな声だった。

ゴーンゴーンと街に夕刻を知らせる鐘が鳴った。

紬はパンパンと手を叩いた。
「皆夕刻よ。家へ戻って御飯にしましょう。」
紬が言うと、街の人々はそれぞれの家へ帰って行った。

しばらくして人が居なくなると、紬はふぅと息をつき城へ帰ろうとした。

すると、紬が居た反対側の噴水の方に座っている人影が見えた。
紬がその顔を見ようと覗き込んだ。
影の主は、紬と同い年ぐらいの少年で目を真っ赤にしていた。膝にはいくつかの水滴が…。

紬は少年の肩に手を置いた。
少年はビクッとする。
「大丈夫?」
紬は優しい瞳で少年を見つめた。
「ひっ姫様!!」
少年は立ち上がった。

スラリと長い足。
散りそうな花の様な羽。

契約天使候補だろうか?

「どうしたの?」
紬は首を傾げる。
少年は黙って俯く。

紬は少年の羽を見つめる。今にも消えてしまいそうなほど弱々しい。

「…もしかして…認定…されなかったの?」
紬が聞くと、少年は微かな声で「はい…。」と言い、頷いた。

―紬の心に、なにかがグサリと刺さった。

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