《MUMEI》
少年ノ名
「…契約天使…目指してくれてたんじゃないの?」
紬は悲しそうに首を傾げた。
「いっいえ!とんでもない!…もの凄く…なりたかったです…。」
少年は首を左右に振った。

「…じゃあ…契約天使に…なってくれる?」
「…もちろん…いいです。けど…」
少年は言葉を詰まらせて俯いた。

そんな少年の姿を見て、紬は笑って見せた。
「平気よ。あなたにはまだ羽があるから。それに、契約天使の決定権はあたしにあるから…。父上も何も言わないわ。安心して」

紬は一息で言うと、ふぅと息をつき少年と目を合わせた。
「認定式の係員もあたしが何とかするから、あなたの天使番号と名前…それから、担当係員の特徴…を教えてくれる?」
紬は不安そうな少年の手を優しく握った。

少年は小さく頷いた。

「天使番号319:輝【あきら】です。担当係員は背の高い若い男の人で…『レン』と呼ばれていました。」
少年の目はさっきまでの真っ赤な目ではなく、澄んだ空の色をしていた。

紬は輝を立たせて、
「よろしく♪あたしの契約天使さん。」
と言った。

夕刻の明るい空は、星が輝く漆黒の空に変わっていた。

紬は、輝の手を引き城へ向かった。

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