《MUMEI》
秘密ノ外出―輝―
輝は手摺りに手をのせ街を眺めた。
街には所々に明かりが灯る家が見えた。

輝は紬に気付かれないように、静かに羽を開いた。
―バサッ
輝は紬が寝ていることを確認して、ベランダから空へと飛び立った。

毛布に顔を埋めていた紬は顔を上げ、寝返りを打ち、ゆっくり目を開けた。

輝は城より高く飛んでいた。
城の屋根は普段は赤いが、今は月が雲に隠れ、赤黒く気味が悪い色をしている。
輝は城に背を向け街の向こうの山へと進路を変え、飛んだ。

―輝の家は山の向こうにある。

輝はスピードを上げつつ街を見下ろした。
―明日‥この街から多くの天使が居なくなる‥。そして、神楽が15歳になる年に新たな天使がやって来るのだ。
「ゴメンナサイ‥。」
輝は小さく呟いて更にスピードを上げた。
羽が契れるような痛みが体中に走る。
『本物』の天使でないから当然のこと‥。
輝は痛みに堪えながら、空を翔けた。

しばらくすると、古びた木造の家が見えて来た。―あれが輝の家‥。

輝は屋根に降りると天窓を開け、そこから入った。
なかは1Kで少し埃っぽい。
輝は迷わず部屋の端にあった棚に手を伸ばし、引き出しを開けた。
中には、赤い石が付いたペンダントと青い石が付いたペンダントがあった。
輝は青い石の方のペンダントを慣れない手つきで付けた。
天窓から差し込む月灯が石をキラキラ輝かせる。

輝はもう一つのペンダントをポケットに入れると、天窓から出て、急いで城へ帰った。

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