《MUMEI》
ベランダ
輝は足音をたてないように静かにベランダに降りた。
「どこに行ってたの?」
輝は体をビクッと震わせた。

声の主は紬で、前開きのセーターを羽織り、ベランダの手摺りの影に隠れていた。
恐らくは全部知っている。と輝は思い、向かった場所と訳を淡々と話した。
紬は黙って話を聞いていた。

話終えると、輝はポケットから赤い石のついたペンダントを取り出し、紬に手渡した。
「何コレ?」
紬は摘んで目の前に掲げる。

「妹がいるんだ。唯一天使になるのを応援してくれた家族」
「へぇ‥」
紬は赤い石と睨めっこをしていた。
「妹がさ、上手く契約天使になれたら、一つは自分に‥一つは姫様に渡してって‥」
輝は首にかかったペンダントを見せた。青い石は、月灯に照らされて輝いていた。
「‥いい‥妹さんなのね‥」
紬は囁くように言い、ペンダントをつけた。
「これでホントに輝はあたしの契約天使ね♪」
紬は嬉しそうに言った。

輝は照れ臭そうに頭を掻いた。

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