貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
――勇気と無謀――
 アルケインから見れば、意味のない反撃であったことは確かだが、本陣に控えた武家貴族の若者にとっては、名誉欲をくすぐられる少数で多数を破ろうとする戦いだった。
「勇気と無謀を見間違えてはならぬ、とはよくいったものだ」
 彼は本陣に対してそう皮肉の具申を行ったが、その反応は自尊心を傷つけられた者のヒロイズムに酔った叫びに過ぎなかった。
「真の勇気と名誉を重んじぬ愚かな傭兵よ。正義の刃が怪物共を斬り倒す瞬間を見ているが良い」
 しかし、この言葉を聞いた傭兵の大半が出戦を拒否したため、刃がお目見えすることさえなかった。
 間違ったタイミングで突入を敢行した貴族とその私兵は、無策が祟ってゴブリンの包囲下に置かれ、完全に孤立したところを袋叩きにされた。
 この包囲戦で、戦闘に参加した貴族四人のうち三人がゴブリンの毒牙にかかり、その二〇倍の私兵も冥界の門を叩いた。
そして、尚も抵抗を続ける“猛将”の誉れ高い貴族アウレス男爵の救出が企図され、アルケインに総大将の呼び声がかかった。

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