《MUMEI》
雅樹の涙
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いつのまにか、沖縄に来て1ヶ月が経とうとしていた。


雅樹は相変わらず、芸能活動をやっていない。


時々、マネージャーとかから電話がきてるっぽいけど雅樹は全て無視していた。













「雅樹……いいの??もうヤバイんじゃない??」


「何だよ??俺にあんな地獄へ行ってほしいのかよ??秋菜は!!」

「違う!!雅樹のことを考えて言ってるんだよ!!こんなんじゃファンの子たちも心配になっちゃうよ!?」


雅樹は私の言葉を無視して、部屋のドアを勢いよく閉めてそのまま閉じこもってしまった…。



雅樹が嫌なのは、私だって分かってるよ。


だけど………これは雅樹だけの問題じゃないんだよ…。







私はいつの間にか、感情の幾つかを取り戻し始めていた…。







―キィ……


1時間半後…………


雅樹は部屋から出てきた。


そして静かに言った。


「マネージャーにはさっき、電話した……あと2ヶ月は帰らないって」


「……そっか」


「俺………自分のことしか考えてなかった……ファンの奴らのことなんて考えてなかった…自己中だよなぁ…本当に」


雅樹………


そんなことないよ。


芸能人は大変だもん……。


逃げ出したくなる時なんて、誰にでもあるよ…。


「雅樹……自己中なんかじゃないよ…今は自分の心を落ち着かせないとダメだよ??2ヶ月間は私だって一緒にいるし……ゆっくりした方がいいよ…」


私はそう言って雅樹の肩を支えてあげた。


すると雅樹の目から、一粒の雫が落ちた。







「ありがとう……秋菜…………」














この日………



私は初めて……………








雅樹の涙を見た―…………。







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