《MUMEI》
終了
「終わった――!!」


みんなの歓声が教室に響く。


思っていたよりも、ずっと早く色塗りは終わった。


「帰るか〜!!」

「お――!!」


みんなすがすがしい顔で、帰る支度を始める。


…どうしよう…

梶野と帰るのはちょっと…

―…普通に振舞える自信ない―…


そんなことを考えていたとき、


「せんぱあい!」


砂糖菓子みたいな声を響かせながら
りかちゃんが駆け寄ってきた。


「…どうしたの??」

「あの、さっきは、ありがとうございました♪
…おかげで、梶野せんぱいといっぱい喋れましたー!!」

「…ううん!」


笑顔で返す。


―…どんなこと、話したんだろ…


「あ!!あと、訊き忘れてたんですけど…」

「なに??」


りかちゃんが
自分のバッグをごそごそとかき回して、1枚の紙を取り出した。


「…あの、これ、期限今日までじゃないですよね??」


差し出された紙を見て、思いついた。


「…これ、あたしがやるよ!!」

「えっ??」


今日、梶野に頼まれてりかちゃんに渡したプリント。

…確か、パンフレットづくり。


「…だから、あたしがこれやっとくから、
りかちゃんは梶野に送ってもらって!ね!!」

「で、でも…」

「いーのいーの!!
…あたし、ホチキス好きだから!!」


…我ながら、こじつけクサイ…


「…えと…じゃあ、お言葉に甘えて…」

「うん!!じゃあね!!」

「…はい!!ありがとうございます!
…今度、おいしいケーキおごりますね!!」

「気にしないでいーよ!!早く行っといでー!」

「はい!!―…じゃあ、さようなら!」

「ばいばーい♪」


りかちゃんが教室を出ていき、
教室にはあたし一人が残った。


…よかった。
梶野と帰ったらきっと、
マキの変な言葉のせいで、変に意識しちゃうに決まってる。


「…やるか!」


あたしの独り言は、
一人きりの教室に寂しく吸い込まれて

あたしをひどく虚しい気持ちにさせた。

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