《MUMEI》 荒れる会場ユウゴの体がゆっくり観客席へと落下していく。 ユキナと竹山は呆然とユウゴの姿を目で追っている。 ユウゴは不敵な笑みを浮かべたまま、客席へと消えていった。 客席は一瞬にしてパニックに陥った。 叫ぶ女、怒鳴る男。 ユウゴを捕まえようと他の人間を押し退ける者。 「何をしている!は、はやく捕まえろ!!」 竹山の声に反応し、ステージにいた警備担当の人間が客席に降りる。 「み、みなさま、落ち着いてください」 慌てて司会者がステージの中央に走り出た。 「落ち着いて、係の者の指示に従ってください」 しかし、そんな司会者の声は虚しく会場に響いただけである。 観客たちの興奮はさらに増し、乱闘まで起き始めていた。 警備係も乱闘に巻き込まれてユウゴを探すどころではない。 ステージの上から見ても、ユウゴがどこにいるのかまったくわからない。 もしかすると、すでに会場から逃げ出したのかもしれない。 ユキナは大騒ぎとなっている会場を、ホッとしたような表情で見つめていた。 前へ |次へ |
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