《MUMEI》
ウサギ
家に帰ると、
まずお風呂に入った。

頭はすっきりしたけど、
ご飯は、胸がいっぱいになって
あまり食べられなかった。


自分の部屋に入ったとき、
りかちゃんのことを思い出した。


…あたし…

『協力する』

って、言った。


―…話さなきゃ。

あたしの気持ちを。


マキにも、東郷君にも、りかちゃんにも。


―…梶野には―…



…梶野に伝えるなんて、


そんな度胸、
まだあたしには無い。


枕元に座ったウサギのぬいぐるみ。

愛おしさがこみ上げてきて、
優しく抱きあげる。


同時に、りかちゃんへの罪悪感と、
梶野が離れていってしまう不安に駆られて、


抱き上げたウサギを、ぎゅうっと、強く抱き締めた。

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