《MUMEI》
・・・
「…あ!…あたし、まだ用事あるんだった!!
…ちょっと、行って来るね!」

「いってらっしゃーい」


まだ始業には早い。

あたしはグラウンドへ向かった。




「…相原さん??」


―グラウンド。

東郷君は、ちょうど朝練を終えたところだった。


「と、東郷君…!
ちょっと、話したいことが…」


あたしがそう言うと、
東郷君はしばらくあたしをじっと見た後、


「…今更、気づいたか」


にやり、と笑った。


…やっぱり、キレーなかお…

…じゃ、なくて!!


「…え!?…い、今更…??…気づい…??」


…どーゆうこと!?


「…あのねえ、相原さん。
…俺だって、むやみに女の子に
手え出してたわけじゃないよ??

…見てたらわかるって。
トモくんのこと、好きな子ぐらい」


と、東郷君は呆れたように言った。


「え…!?…じゃ、じゃあ、あたし…」

「…まあ、相原さんだけは、
勝手が違ったんだけどね。」

「…へ…??」

「―…なんか悔しいから、
詳しくは教えない!!」


東郷君が、イタズラっぽく笑った。

…よく、わからないけど…

東郷君は、優しく受け入れてくれた。


「…あ。…1つ、忠告。
相原さんさあ、トモくん、もてないと思ってるでしょ??」

「…え…」

「それが、結構もてるんだよ。
俺、トモくんに彼女出来ないように
すげえ頑張ったもん。

…今までトモくんに彼女いなかったの、
俺…、と、相原さんのせいだからね」

「…???」


…よく、わかんない。
東郷君はわかるけど…
なんで、あたし??


「…わかんなくていーよ。
そんで、俺が言いたかったのは…
姫井って子のこと。
…その子が今1番のライバルになるはず。

―…俺はもう関わんないから、
相原さんがその子に勝つしかないよ??」


…東郷君、よく見てる…

あたしも、覚悟を決めよう。


「…うん!!」

「よし!…頑張れよ」


そう言って微笑んだ東郷君の瞳は、

…やっぱりどこか寂しげだった。

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