《MUMEI》
選抜リレー
『選抜リレー、選手は…』


―…始まった。


まずは、女子から。


マキは、第一走者だ。


パンッ!!!


ピストルの音とともに、
選手が一斉スタートする。


「マキ!!!がんばれー!!」


応援しかできないから、
精一杯声を張り上げる。


―…マキは、先頭で第2走者にバトンを渡した。

そして、あたしに気づくと、
自慢げにピースサインを送った。


あたしも笑顔でピースサインを返す。


…カッコいいよ、マキ!!


結果は、青、赤、緑、緑、赤、青。

マキのグループは、2位だったけど、
マキが一番速かったと思う。


次は、男子。


パンッ!!!

第1走者がスタートした。

その中には東郷君もいる。

東郷君はE組だから、青組だ。


黄色い歓声に包まれながら東郷君は、
2位の赤組に大きく差をつけてバトンを渡した。


リレーは進み、ついにアンカーへとバトンが渡る。


1位の青組のアンカーがスタートする。

この時点で、東郷君が作った2位との差は
ほとんど縮まっていない。


盛り上がる歓声の中、


2位の赤組のバトンが



アンカー、梶野に渡った。



バトンを受け取り、梶野が走り出す。


…梶野がこんなに足速いなんて、
知らなかった。



どんどん1位との差を詰めていく。



「頑張れ…!!!」



ぎゅっと、拳を握り締める。


あと、少し―…



そして、
梶野が1位の青を抜いたとき、


赤組のテントから大歓声が沸き起こった。



梶野はそのまま1位でゴール。



瞬きするのも忘れてしまうほど、



―…梶野は、かっこよかった。



目を離せずにいると、
梶野がこっちに気づいて、手を振ってきた。


あたしも、小さく振り返す。


後ろの方から、


「あの1位の人、かっこよかった〜!!
…先輩かなあ!?」

「赤組のでしょ!?
かっこよかったよねー!!」


という1年生の会話が聞こえてきて、


あたしは、複雑な気持ちになった。

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