《MUMEI》
頬を濡らしたモノ
.




空港についた時………


雅樹の目は赤かった。


私は見て見ぬ振り……。



綺麗な瞳が台無しじゃんよ…。


「秋菜…………俺………事務所に行くから………秋菜のこと送れない………」


「一人で帰れるし……」


私のばか…………!!


最後くらい可愛く笑って"平気だよ"って言えないの…!?



「頑張って………ね…」



私は震えた声で………そう…呟いていた。



「俺のこと忘れないで…」


「テレビで観るから忘れられないってば」


「だよなぁ…………(笑)」



雅樹は苦笑いだった。



何でそんな寂しそうな顔してんのよ…。


こっちが困る。


「…………じゃあ…ね…」


私は雅樹に背を向けて静かに歩き出す。


私と雅樹の間に二メートルぐらいの幅ができたとき………



「秋菜っ…………!!!!!」


振り向くと涙を流した雅樹の姿が…………



「………会えて良かった……」


雅樹がそう言った瞬間…



私の頬が何かに濡らされた…。


私は涙だとも知らず、雅樹をただ見つめる……。



「雅樹………頑張って…ね…応援してるから……」


私の頬はどんどんぬらされてゆく…………。




「秋菜…………俺……………」


「………??」


「………やっぱ、何でもねぇ!!じゃあな…秋菜!!!!笑顔を忘れるなよ―――!!!!!」


雅樹は大きな声でそう叫んで私に背を向けて―…………





走っていった―……………。







私は1時間ぐらいずっと………





その場に座り込んで、





涙を流していた………。






周りの人の視線も全て………




忘れたかのように―………






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