《MUMEI》

両親が世を去って、もう8年になるだろうか。

身寄りない俺達が生きるには、12歳というのは厳しくて。
色々と無理が祟ったのかもしれない。

しかし
金の為に家を離れて働く弟に佑哉がついていけなかったのは、どんな理由があろうと俺のせいで。

文句も言わず俺の世話を続ける義妹に、申し訳なさが込み上げる。


本当に…


「…すまない…」

「お義兄さん…?」

「温かい茶を容れてくれないか?
やはり…少し冷えたようだ」


腰を上げ、名残惜し気に桜を見る。

「はい」と言う佑哉に微笑み返し、踵を翻した。



暗いままの自室に佇みながら。

沈んだ太陽が影を落としていく。

いつ消えるともわからないこの命なら、いっそのこと早く消えてしまえばいい。

いつか、身体に収まりきらない想いが漏れてしまう前に。


まだ耐え切れる内に。



何かが頬に触れた。

ぱたぱたと落ちるソレは、冷たく畳にシミをつくる。

漠然とソレを見つめて、何故畳は濡れているのかと思った。

何故、今もシミは広がり続けるのかと。


「お義兄さん!?」


ぎょっとした様子で、手に湯気の立ち上る湯飲みを持ちながら佑哉は声をあげる。

そっと頬に触れた指先が、酷く温かかった。

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