《MUMEI》

 

「佑哉…」


佑哉の手に自分の手を添えれば、自分の頬を伝う水滴に触れた。


ああ。泣いているのか、俺は。


心配そうに顔を歪める佑哉を、ア然とした気持ちで見つめる。

泣くつもりなんてなかったのに、何故俺は泣いているのか…と。


「……佑哉…」


だが口をついて出る名前に、そんなことなどどうでもよくなって。

手から伝わる体温が、どうしようもなく愛おしくて。

理由もなく、やたら…

抱きしめたい、と。

もっと触れたい…と。


欲が溢れて


気がつけば、俺の唇は佑哉のそれに押し付けられていた。



ゴトリ、と、湯飲みが落ちる。

零れた茶は、じわじわと畳に吸い込まれていった。


「んぅ……?!」


驚愕に目を見開く佑哉は、ぐっと俺の胸を押す。

俺は離すまいと、さらに佑哉を引き寄せた。


貪欲に、噛み付くように佑哉の口唇を貪る。

突っぱねられていた手が、だんだんと俺の胸に縋るように握られて。


「佑哉」


今更、理性なんて役に立つはずもなかった。

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫