《MUMEI》
嘘と言って…
「八神!」
晴香は必死にドアを閉め、よろけていた八神を両手で支えた。

八神は無言のまま晴香の手を払うようにして、車椅子に座った。

「八神…?」
「僕はもう帰るから、君はきちんと授業受けるんだぞ」
八神は、手を回して車椅子を動かした。
「あっ、そうだ。」
八神が、くるりと振り返り晴香を見た。
「一つ言っとく…僕の八人の神様の一人を君にあげるよ」
「は?」
八神は晴香の声が聞こえなかったの様に、廊下をどんどん進んで行った。
「わけわかんないのぉ…」
晴香は小さく呟いた。

―その日の放課後
晴香は風紀委員の仕事を、書記の松原奈々と応接室でやっていた。いつもの地下室の入口の席で。
「遅刻者多いね〜」
「うん…あっ居たよ常習犯!」
晴香は奈々が差し出した紙を見た。
「梅ヶ丘駿太朗【うめがおかしゅんたろう】?」
晴香は奈々から紙を受け取りじっくり眺めた。
梅ヶ丘は晴香のクラスメートである。
「全く…困った人ね…。奈々ちゃん、探して来てくれる?」
「了解です!晴香副委員長!」
奈々は椅子から立ち上がって、ビシッと敬礼をした。
奈々は小走りで応接室を出て行った。

晴香はふーと息をついた。
―ガララッ
「早いね奈々ちゃ…!」
晴香はドアを見つめたが、そこに居たのは梅ヶ丘だった。
梅ヶ丘は何も言わずに、八神専用の机に腰をかけた。
「ちょっ…梅ヶ丘君…そこはダメだよ。委員長席…」
「は?なに?後藤?」
梅ヶ丘は欠伸をしながら、晴香を睨んだ。
晴香は少し怯んでしまったが、睨み返し言った。
「だから、そこは委員長専用なの!」
「なら、問題ないだろ」
「なんで!?」
晴香は思いっ切り机を叩いた。

「俺が新風紀委員長だからだ」

晴香の体は硬直した。
「なんで…?」

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