《MUMEI》
八神の部屋
「八神〜順調か〜?」
ドアから八神の兄、八宵【やよい】が顔を出した。
「なんだよ兄貴」
八神はベットに座りながら、手近の段ボールに荷物を詰めていた。参考書や教科書が多い。
八宵は八神のベットに近づいた。
「お前さ、勉強しすぎだろ?」
「万年赤点の兄貴からしてみればそうだろうな」
八神はいっぱいになった段ボールをしめて、八宵にガムテープを差し出した。
「しょうがないな〜」
八宵は仕方なく受け取り、手際よく口を塞いだ。
「サンキュ」
八神はガムテープを受け取り、次の本棚に取り掛かった。
その棚には『犯罪学のすすめ』と書いてある本が隙間無く並んでいた。
「八神…お前…まだ関わる気か?」
八宵の言葉に八神の手がピタリと止まった。
「また痛いめをみるぞ」
八神は八宵の言葉を無視して、本を箱へ入れた。
「お前の気持ちはわかるが、辞めといた方がいいって」
「分かってないじゃんかよ」
「は?」
八神の手はカタカタ震えていた。
「僕の気持ちなんて…結局は誰も分かんないんだ!」
八神は乱暴に本を投げ入れた。
「八神…」
八神は顔をそっぽへ向けた。
「もう…出て行ってくれ…」
八宵は戸惑いを見せながら、渋々部屋を出た。

八神は、八宵が自分の部屋に入ったことを確認すると、ヨロヨロと歩いて階段を下り、まだ禁止されている松葉杖をついて、玄関の扉を開けた。

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