《MUMEI》
女学院のプール
「プール?」
「ああ」
有河原樹は口に拳をあててしばらく考えた後、手をポンッと叩いた。
「あるよ。隣にある、私立冥聖【メイセイ】女学院!」
「はぁ?女学院だあ?」
俺は顔を歪ませた。

俺と有河原樹は冥聖女学院のプールサイドに居た。
冥聖女学院は県下1の設備なので民間人も自由に使う事が出来るらしい。
「ははっ、マジできちまった」
「わー!広いね!沢村!」
有河原樹は子供みたいにはしゃいでいた。
「おい。プールサイドは走るなって…」
俺が言いかけたところで、有河原樹が足を滑らせてこけた。
「痛ってぇー!!」
有河原樹は起き上がって背中を抑えた。
「馬鹿か…」
俺は呟きながら服を脱いだ。水着はあらかじめ寮から着て来た。

「有河原!俺は泳いでるぞ!」
俺は軽くストレッチをしてプールに軽く足をつけた。
「ひっ!」
まだ4月…水は冷たく、風が吹くたび刺されるような痛みが全身に走る。
俺は手で水をすくって体にかけ、体が慣れてからプールに入った。
「冷てぇー!!」
俺は体を小刻みに震わせたが、慣れればたいした事無かった。

俺は黒いゴーグルをつけた。目の前が暗くなる。
俺は息を吸って勢いよく潜った。
水の中は割と澄んでいて綺麗だ。

俺は一度水から顔をだし、再び息を吸って壁を強く蹴った。
軽く伸びをすると、体が浮くような感覚になる。次第に、それが心地良く感じた。
俺はそのまま何処まで行けるか試そうとした。
「わー!!沢村!死ぬな!!」
有河原樹がいきなりプールに飛び込んで来て妨害した。

―プチッ
…俺の頭の中で変な音がした。

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