《MUMEI》
負けず嫌いだ…
うちの学校の中庭には、温室の植物園がある。主に、理科の授業で使われる。
さっきの女子は二ノ宮咲智香【ニノミヤサチカ】と名乗り、俺をここへ連れて来た。

さっきから下を向きもしもじしている。
この状況は告白だろうが、忙しい俺にはうっとうしい。
「あのっ…ぁの…」
「ん?」
彼女は口を開きかけたが、再び閉じてしまった。
(ああ…最悪だ…こいつ…)
俺が思っていると、彼女はゆっくり口を開いた。
「あ…あの…私…けんっ…剣道部のマネージャーをしてて、いつも…沢村君の事…見てました!…す…す…好きです!つ…つ…付き合って…ください!!」
彼女はそこまで言うと、酸欠になりそうになりながら走ってその場を立ち去ってしまった。
「俺にどうしろと…?」
俺はあても無く呟いた。

俺が告られたという話は一気に広まって、俺が教室に戻るとみんなのがニヤニヤしていた。
こう言う風にみなまで告られた場合、告られた方が嫌な思いをする確率がやたらと高いと、聞いたことがある。
俺は、身を持ってそれを感じた。

俺はニヤついている奴らを無視して席についた。
後ろの席の有河原樹は2枚の紙を眺めながらなにやら呟いていた。
「どうした?有河原」
俺は椅子を傾けながら有河原樹に聞いた。
有河原樹はカクカクロボットの様な動きをしながら紙を手渡した。
俺は紙を丁寧に開く。中身はどっからどう見てもラブレター。しかも…2枚…。
俺は、自分が有河原樹の方が1人多いことに、腹立っているような気がした。

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