《MUMEI》 久々のプール6月も終わりに近づき、じめじめした時期が通りすぎ、太陽が地面を照らす季節になった。 俺は雨が降らなくなってからすぐに練習を始めた。 水に浮くあの感じは相変わらず快感だった。 まるで魚になった気分。 俺の泳ぎ方は普通にクロール。足も腕も絶え間無く動かす方が早く進む(俺的には) 有河原樹は俺が教えたバタフライで溺れるように泳ぐ。 可哀相な事に、サッカー部は水泳大会に強制参加なのだそうだ。 「沢村〜!」 俺は50m泳いで息を整えていた。 俺はゴーグルを外して目の回りを軽く拭いてから有河原樹を見た。 有河原樹は手に袋を持っていた。 俺は、水を掻き分け有河原樹が居るプールサイドに近づいた。 「なんだそれ?」 有河原樹は袋を探って中身を取り出した。 「…プリン?」 「そっ!冥聖の購買は有名でプリンがかなりイケるんだって!」 俺は、プールから上がってタオルを羽織ってプリンを貰った。 黄色に黒のカラメルが混ざっているという不思議な感じで、正直見た目はやばい…。 俺は、ゆっくりスプーンを口へ運んだ。口の中で甘いものがとろけていった。 「うまい…」 俺と有河原樹の声がかぶった。 俺は、プリンを食べるだけ食べて満足し、再び練習に取り掛かった。 有河原樹も隣のコースで練習していたが、いつもより動きが鈍くなっているように感じた。 前へ |次へ |
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