《MUMEI》 嬉しい偶然「それでは、種目ごとにアップをして練習を開始して下さい。高校生はしっかり指導するように。以上!」 宮川さんはそういうとハードルの選手を呼び集めた。 あたしは短距離選手なので別の人の元へ行った。 「短距離の相澤です。今日はよろしくね」 そう言って、相澤さんは軽く頭を下げた。白いゴムで縛った髪が軽く揺れる。 中学生は、あたしを含めて九人。男子五人、女子四人。 高校生は相澤さんと二人の女子しか見当たらない。 あたしの気を察したのか、相澤さんはあたしに顔を向け話した。 「今男子二人が用具を取りに行っているからいないの。でも、今日は欠席が多いけどね」 相澤さんが困った顔で笑いそう言うと、輪を作り準備体操を始めた。 グラウンドにはイチニッサンシッと言う声が響き渡っていた。 「うぃ〜ス!相澤先輩ぃ〜準備物お運びしましたぁ〜」 二人の手の中には、スタートブロックが二つずつあった。 「ありがとう。桜、雲雀」 相澤さんはあたしの背中を押しながら答えた。 (えっ!?雲雀さぁん!!??嘘っ短距離だったの!?) あたしは顔を上げようとしたが、相澤さんの力に負けた。 「あれっ?律ちゃん短距離だったんだ」 雲雀さんは、相澤さんに押され唸っていた、あたしを見て言った。 「えっ…雲雀‥知り合いなの?」 相澤さんは力を強めて言った。 「イタタタタッ!!!痛いですっ相澤さん!」 あたしは思わず声をあげた。 「あっゴメンなさい!」 「あ〜あ‥相澤先輩イジメちゃダメじゃないですか」 雲雀さんはそう言いながら相澤さんの手を退けてくれた。 「大丈夫ぅ?律ちゃん」 「はい♪ありがとうございます」 あたしは腰を抑えながら言った。 「こうやって伸ばすといいよ」 雲雀さんはあたしの腰に膝を当ててあたしの肩を軽く引いた。 (イタッ‥) そう感じながらも、あたしは腰が楽になるのを感じた。 (雲雀さんは優しいなぁ…///) 前へ |次へ |
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