《MUMEI》
彼女持ち
「雲雀〜」
「おう!桜、セッティング終わったか?」
雲雀さんはあたしから手を離して桜さんに近づいた。
桜さんは、見た目が女子と見間違えてしまうほどの美人で、背と鼻が高いのが特徴的だった。
並ぶと『美男美女』って感じ‥かなりお似合い‥。
「あっ、律ちゃん。これでもコイツは正真正銘の男だから。なぁ〜桜ちゃん♪」
桜さんに同意を求めた雲雀さんは、桜さんに後頭部へのチョップを許してしまったらしく、頭を抑えた。
「阿呆雲雀。そんなんだから、彼女と音信不通になんだよ」
「なってねぇよ!!メールの返事が無いだけ!!」
――ドクンッ
あたしの心臓は大きく波打った。
「えっ?ひっ雲雀さん‥彼女いるんですか?」
あたしは思わず聞いてしまった。
「‥あぁ‥うん‥まあね」
雲雀さんは照れたような笑みを浮かべた。
「でもコイツさ、彼女の名前も教えてくんねぇの」
雲雀さんは自分の肩にのしかかる桜さんに「当たり前だ馬鹿」といい、脇腹をくすぐった。
「あひゃゃゃゃ!!無理無理!雲雀ストップ!スロップ!」
雲雀さんは呆れた顔をして手を離した。

あたしはどうしても気になって聞いた。

「雲雀さん‥あたしにだけ、こっそり教えてくれませんか?」
雲雀さんは緑のスパイクケースを持ち上げながら、
「秘密にする?」
と聞いて来た。
あたしは勿論「はい」と答えた。

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