《MUMEI》 二人だけの秘密「相澤先輩」 雲雀さんの言葉にあたしの目頭は熱くなった。 「ナイショだよ」 口に人差し指をあてて雲雀さんは囁くように言った。 あたしは苦笑いを浮かべて頷いた。 その日の練習は身に入らなかった。 「はぁ〜」 あたしは帰ってくるなり、ベットに倒れ込み溜め息を吐いた。 (雲雀さんに彼女がいたなんて…しかも年上ぇ!) 「も…ヤダな…」 あたしは呟いた。 「何が嫌なの?」 「んー?今日の…!」 あたしは言いかけて、起き上がった。 ベットの横には、双子の姉の蜜【みつ】が立っていた。 蜜は、あたしと違い頭がよく、私立の常葉【ときわ】学園の特待生である。長い黒髪を右へ寄せ結ぶのが好きである。 「みっ蜜!なんで勝手に人の部屋に入ってくんのよ?」 「え〜!このゴミ置場みたいなニオイのするとこが部屋ぁ〜?」 「はぁ!?蜜に言われたくないわよ!」 あたしが言うと、蜜は手近にあった、灰色に変色した靴をつまんだ。 「きったないよ〜律ぅ」 「汚くない!用がないなら出てって!」 「用はあるわ」 あたしは動きを止めた。 「律の知り合いって人が店に来てるわ」 あたしは真っ先に雲雀さんを頭に浮かべた。 前へ |次へ |
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