《MUMEI》
輝ノ羽
「輝…すごいね…」
紬は輝にしっかりつかまりながら言った。
輝は雲と並ぶ位の高さまで飛びながら城を目指していた。
「にしても、何だったんだろうね?あの人達」
「わかんない…でも、王族の人間をつけるなんて最低よ」
紬は歯を食いしばった。

「紬、そろそろ降りるよ」
輝は紬の部屋のベランダに目を向けた。
「ああ、うん」
紬は再び体が浮くような感覚に陥り、地面に足を付けたときフラついてしまった。
すかさず輝が支えた。
「ありがと」
「いえいえ♪仕事ですから」
輝はにこりと微笑んで見せた。
紬と輝はドアを開けて中に入った。
紬はドレスのままソファーに寄り掛かった。
「でも、輝」
「な〜に紬?」
輝は部屋の隅のポットから紅茶を注ぎ紬に手渡そうとした。
「テーブルに置いて」
「はいはい」
輝は呆れたような顔をした。
「で?何紬?」
輝は自分の分の紅茶を啜りながら聞いた。
「ああ、偽の割には羽が綺麗なのよね。輝は…」
「えっ?ホントですか!?」
輝は母親に褒められた時の子供の様な顔をした。
紬は少し驚く。
「ええ…だって、偽天使は羽が消滅してしまうのに、輝のは綺麗なのよ」
「実は『Wingus』を使ったんです」
輝の言葉に紬は世界中の絶望を全て味わったような気がした。
「…『Wingus』…ですって…?」
紬の声は掠れていた。
「…はい…。」
輝は困った顔をして頷いた。


『Wingus』とは、天使の国に存在する薬物で、『うまくいけば羽は輝き、失敗すれば羽は腐る。』という効果がある、恐ろしい薬物である。

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