《MUMEI》 水泳大会当日真っ青な空。 透き通る雲。 心地良い風。 水泳大会にはもってこいの天気だった。 『只今から、三浦高校水泳大会を開会します。』 ノイズの後に委員会の生徒の声が聞こえた。 俺はプールサイドのとこで準備体操をしていた。 俺の出番は後ろから3番目。 1年生の自由型部門だ。 と言っても、参加者は少なく、自由型は俺と有河原樹の他3人だけだ。 「沢村」 隣で準備体操をしていた有河原樹はいつの間にか、プールサイドに座り込んでいた。 「お前…体操しろよ」 「いいの〜沢村も女子の部でも一緒に見ようよ」 有河原樹は酔っ払いのおっさんみたいに絡んできた。 「見るかよ!変態め!」 俺が犬を追い払うようなそぶりをすると、有河原樹は口を尖らせた。 (女みたいな仕草しやがって…可愛くもねえ…) 俺はそう思いながら首を回した。 『続きまして…1年生の自由型部門です』 アナウンスに俺と有河原樹は顔を上げた。 「時間だね沢村」 「だな」 俺はぶっきらぼうに答えた。 こいつは結局準備体操をしなかった。 余裕をこいてるのか…諦めているのか…。 俺は頭をガシガシ掻きながら審判員にチェックを受けた。 俺は第2コーナーで有河原樹は第1コーナー。つまり、隣だ。 俺は「よーい」の声がかかるまでアキレス腱を伸ばした。 ―俺の歯車は廻る…。 ―規則正しく…。 ―俺の計画通りに…。 「よーい!」 選手は飛び込み台に上った。 前へ |次へ |
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