《MUMEI》 誰そ彼頬が痛い。一応、売り物の顔なのにばっくり殴られた。 濡らしたハンカチで顔を冷やす。鏡で見た自分の顔は失恋も手伝って何て滑稽なのだろう。 涙も出ない。 そういう演技は得意なんだけどね。 フラれて当然の恋だった。初恋は実らないってよく言う……。 一目惚れだった、入学式で見かけてから。歩く姿を目で追っていて、同じ部活にまで入ってしまった。 俺ってば純情。 こんなに誰かを好きになったのは初めてだった。インスピレーションだ、彼が欲しいと身体が言った……気がする。 正直、気付かれていた節はある。嫌悪さえされていたかもしれない。同性が好きなことも互いに気が付いてて、日常を何食わぬ顔で過ごした。そんな彼の涼しい目に弱かった。 学校も暫く仕事で埋まっている。幸運だ、彼から距離を取れた。ラジオやテレビ、雑誌……、若さを売りにしたタレント業。高遠光17歳……失笑。 いつ辞めてもいい覚悟はしている。親が無理矢理続けさせてるようなもので、何になりたいわけでもないし……、特に目標もないからなんでも仕事は引き受ける。この間は顔面パイまみれになった。意外に楽しかったし?プライドは持たない主義。 前へ |次へ |
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