《MUMEI》 人生にトラブルはつきものだ。しかし、何が悲しくてたまたま助けた男を家にあげなきゃいけない? 「小暮国雄……くにお……なんで店だとレイなの?国雄にすればいいのに。」 「静かにしろ。隣人に迷惑だ。」 先に家に入れた。見渡し終えるとテーブルの付近に落ち着いたようだ。 「外観より綺麗。」 余計なお世話だよ。 「五月蝿い。ホラ、着替え。多分サイズ入るから。タオル干してるやつ取って使って。」 風邪になられたら罪悪感に苛まれる。 シャワー入っている間にお茶を入れる。安いほうじ茶しかない。 「……ねー。石鹸無いよ。」 全裸で脱衣場から出て来た。ぼたぼた水滴を垂らしている。 「あああああ、今出すから引っ込め。」 親にマナーのーつも学ばなかったのか。 「石鹸。」 足跡を追うように床を拭きながら下の収納から石鹸を出してやる。 受け取ったのに扉を閉めない。 「何?」 床に散らばる湿っぽい服もハンガーに掛けつつ見上げた。湯気が立ち込めている。 「ジャージになってる。」 「家でもスーツな奴の方が少ないだろ。」 「似合ってたから勿体ないなあって。」 「今更お世辞言われても。」 屈んで俺と同じ目線になった。きちんと向き合えば見られる顔だ。ウチの奴らよりちゃんとした身なりをすれば見栄えするかもしれない。ただ髪の色やピアスがチンピラくさい印象を与えている。 「口説いてる。」 「一万光年早い。俺の年収越えてから出直しな。」 ガキのくせにませた事を言うもんだ。 前へ |次へ |
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