《MUMEI》

変な男だ。世話するのが趣味なのか?

衣類はきちんと干されていて、着替えも畳んである。内側のポケットを探った。




風呂場から着替えて出て来ると飲み物が置いてあって、すぐ下にでかい屍が床に倒れていた。

……寝た?肩が上下している。象が昼寝しているみたいだ。

髪は金髪だからみてくれはライオンっぽい。日本人離れした顔立ちだ。急に喉が渇いてお茶を飲み干す。
湯呑みに入れてあるけど氷がちゃんと入っていて冷たくなっていた。

綺麗な黄金率の横顔……。重力に引き寄せられてか顔を覗き込んだまま沈んでゆく。

「……ちう一回につきごじゅうまんえん。」

大きな手が俺の顎を支えた。目線が合う。

「駄目な奴のこと、放っておけないんだ?感謝された後の優越感が堪らない?」

鉄の味と一緒に彼を見つけた。俺を蔑みの目で見た、同族への視線。

「……言ってろ。」

「俺と同じ目をしてる。……全部嘘の世界で生きてるんでしょ?」

国雄の喉元に手をかける。少し顔を歪ませただけですぐに形勢逆転されて俺が地面についた。

「お前と同じにするな。」

国雄は俺から離れてテーブルに肘をついた。

「俺は正直な嘘つき。国雄は嘘で固められた嘘つき。世の中の半分は馬鹿にして、自分に干渉させないために優しいフリしてる。」

「いい加減に……」

「だからレイに捨てられるんだ。」

あ、綺麗な顔を醜く歪ませて……なんていい顔しているんだ。腹に乗られ身動き取れない。直接ぶつけられる怒り。血相変えて、というやつだ。

「その口、聞けなくしてやるよ。」

「いいよ、国雄になら。口を……どうするの?」

敵意と好意は曖昧で笑いたくなってきた、あまり睡眠取ってないからハイなのかも。
全て暴いてやりたくなる。この男に取り巻くものを外し、解放してやりたい。

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