《MUMEI》 不信がられている。自分でも馬鹿だと思う。 体から好きになるなんて。 ぶっ続けで午前4時から夕方近くまでヤられた。 それでも向こうはシャワー浴びる余力あったりして、化け物かと思う。人間離れした体力でなきゃホストって出来ないのかな……シャワー浴びてる隙にこの部屋の鍵だけ盗んで逃げた。 半日すんごいSEXしてたせいか、フラれたことなんかすっかり忘れていた。 思い出すのはあの時のことばっかりで仕事もまともに手につかない。 てか、体壊しかけて病院行った。 「金目当てか?」 いえ、……どちらかと言えばカラダです。 「自分の分は自分で稼げる。こうしてお帰りって言わせてくれるだけでいいんだって。仕事もあるしそう俺も頻繁に来ないから。」 顔だけでもいいから見たい。声が聞きたい。 「……寝室入ったら殺す」 ふらふらと国雄は暗い引き戸の中へ消えた。 もしかして、また来ていいってこと? 脱ぎっぱなしの上着を拾う。あの性格なら畳んでから寝ると思ったんだけど、疲れているのかな。 年だからこの間の疲労が今更きたとか?……本人に言ったら殴られそうだ。 上着に鼻を擦りつける。女物のキツイ香水と優しい国雄のコロンの香りと体臭……。 嗅ぎすぎた。香りが混じっててむせ返る。 なんでこんな質素な生活してるんだろう。仕事の時は華やかな姿ではあるけど、あんな大きな店のNo.1ならもっと稼いでいるはずなのに車も無いし、目立った家具も無い。 ……借金でもなさそうだし。 ……レイ どんな人なのかな。 多分、ううん絶対イイ女。 レイって名乗るくらいだし恐らくこの仕事始めたきっかけだったんだ。 びっちり閉まっている戸の先を見つめた。 ……高遠光、二度目の初恋かもしれない。 前へ |次へ |
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