《MUMEI》

「お帰り、大学の友達からハガキ来てたよ?」

高遠光は愛想はいい。毎度懲りずに足しげく我が家に不法侵入を繰り返す。
郵便物にも手を出す。昔つるんでいたヤツからの結婚しましたハガキだ。

「中退なのによく覚えてるな……。」

「目立ってたんだよ。女癖悪そうだもん。」

勘も鋭い。刑事並だ、今の所は家族構成と次男ということと、レイは幼なじみで、大学は中退した辺りまでゲロった。
二郎君やなな君とはいい兄貴分でいられるのに高遠は少し違う。

「お前はちゃんと学校行ってるのかよ。こんな朝方に起きて」

「仕事無い日に午後は行ってる。あんまり学校好きじゃないし。補修授業受ければいいから。」

「卒業はしろよ。大学行け」

「事務所にも言われた。俺の人生だもん勝手にさせてよね。あ、就職しよーかな。国雄のとことか。」

「間に合ってます。」

冗談じゃ無い。缶珈琲を一本渡す。自分の分は歩きながら飲みきった。

「飲んでいいの?流石サービス業、気配り上手。」

「それ飲んだら帰れよ。」

寝室に入る。入ってすぐにベッドがあり、殆ど部屋を占領している。しかも少し屈まないと入れないというサイズだ。
寝苦しいときもある。

高遠は俺が寝静まると施錠して出ていく。今の所は財産は盗られてないようだ。

何時間経ったかな。明かりも消えたから高遠も帰っただろう。

眠れない、眠れるかよ。
水でも飲むか……
明かりが消えているからもう帰っただろう。


「うわ、まだいたの。」

暗がりで踞る高遠が爪先に当たった。

「…… アッ、」

「オイオイオイ勘弁してくれ。自分の家帰ってから抜け。床が汚れる。」

この間も拭くの大変だったのだから。




「……俺のカラダ悦くなかった?まだ、イけたの?」

なんでこう弱ってるときに言うのかな。

「あれは間違い、人間誰しもあるやつだ、忘れていいから。欲情してた訳じゃ無い。」

ハッキリ突き放そう。

「あの人レイの手紙に書かれていた名前だった、何でレイと結婚してないの?
悔しくないの、何でレイに会いに行かないの?」

質問の嵐。どうしてこうも人の気も知らないでずけずけ物を言えるのだろうか。また腹の底がむかむかしてきた。
暗くてよく解らないのに高遠が笑った気がする。



高遠の首を締める。体が勝手にというやつか。




「会えねーんだよ……レイは死んだんだ!」

どうしてこんな男にレイを知られなければいけない。レイの死を教えなければいけない。

「………… クッ、 は!」
コイツに言葉を話させたくない。喘ぎや叫びの方がマシだ。

「苦しい?気持ちイイ?どっちだ?!」

高遠の喉を片手で締めながら形の変わりかけた先と根元を握る。

「……っ!」

口がぱくぱく動いている。苦悶した表情とは裏腹に尖端は屹立としていた。

高遠の両手が俺の顔へ伸びる。喉の手の力を少しだけ抜いてしまった。

「……そ な、 つも り……じゃ……






……ご めっ………… 」




高遠は笑っていなかった。何してるんだ俺、酷く虚しいじゃないか。

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