《MUMEI》

首に痕がついた。
ストールで隠す。


酷い男……乱暴で力任せで……、でも真面目だ。


待つのは得意。
扉が開いた。国雄が帰ってくる。

「間髪入れずに来たな……」

国雄は深いため息を吐いた。玄関に腰を下ろしたまま倒れる。寝息をたてていた。

「……酒臭い……このままだと、風邪ひく。」

寝室、入っていいよね。
引きずりながらベッドに運んだ。上着を脱がせる。

どれだけ飲んだら倒れるんだろう。深い眠りみたいだ。シャツの釦も少し外す。
胸筋が覗く。格闘技とかしてたのかも。運んだとき重かった……。

狭い部屋だ。
人一人がやっと通ることが可能の隙間とベッドと押し入れしかない。

ベッドに顔を乗せて眠る国雄を見る。芸能人になれば良かったのに、下手な俳優よりかっこいい。
眼鏡掛けたら似合いそう。……とか、俺も懲りないな。

起こさないようににじり寄っていく。

呼吸を合わせながら唇を重ねた。一回につき五十万の接吻だ。

「  ……う 」

やばい、起こしたか?
薄目を開けていて、目が合った。

「………………レイ?」

大きな手が俺を引き寄せた。咄嗟に厚い胸板に片手をつく。
相手の舌先が前歯にぶつかる。酒臭い。罵って殴って出ていけばいいだけの話なのに口を開けて応えてしまう俺は愚かだ。

唾液が満遍なく回る。
アルコールの匂いが口いっぱいに充満した。
酒も手伝ってか頭がぼーっとしている。
目を閉じ陶酔しきっている国雄を見ていたら更に熱が増した。

暫くして舌の動作が鈍くなって来た、熟睡モードらしい。口を離すと唾液が名残惜しそうに唇から糸のごとく垂れていた。

「……間違えねーだろ普通」

片手を掴む。ぴくりとも動かない。
そのまま自分も顔をベッドに埋め、眠ることにした。

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