《MUMEI》

レイが夢に出てきた。
謝りたくて手を取ったはずがキスをしていた。
長いやつだ。
耳鳴りみたいにぐちゅぐちゅ音が響いてやたらリアルな夢だった。




この天井の低さは寝室だ。かなり飲まされてたけど、なんとか家に着いて……


右手に何か握っている。


「……んー 手?           ……手!」

叫んでしまう。高遠がベッド半分使って眠りこけていた。

「う?……オハヨー」

眠そうに空いてる方の手で目を擦っている。



んんんん?
衣服は乱れてないよな。よく解らない。無益な時間ばかりが過ぎてゆく。


ぐぅぅぅ

「……腹減った。」

思考よりまず食欲優先だ。



「タラスパだー。」

つい、二人分用意してしまった。

「寝室入ったら殺す言ったよな?」

あまり噛まずに、がばがば口へ運んでは飲み込んで行く。食わなきゃ、やってられない。

「あ、美味い
介抱した相手にそれはないんじゃない?」

コイツ、フォークの使い方下手くそだ。

「たんとお食べ
それはこっちに非があるけれども、昼だぞ昼!若い男が出入りしてたらご近所さんに怪しまれるわ。」

水を一気した。

「甥っ子だとか言えばいいじゃん。」

「あのね、君のために言ってるのだよ?」

「フォークで差さないで、あと近付くのも止めて。
五十万なんてポンと出せないからさ。」

高遠が耳元で囁く。フォークが指から零れた。

「俺、お前に何かしたよな?」

さっぱり記憶飛んでる。考えると頭痛いし。

「レイ……とか言ってべろちゅーしてきたじゃん。」

「ブッ、何それ!」

何処の阿呆だよ。

「自分からじゃないから払わないからね?」

「その、ちゅー話……創作じゃなく?」

向こうの片眉が上がった。

「往生際が悪いな!
会って初日にレイプして腹おかしくさせて病院通いにしたのもあんた!
痕残る程首絞めて下半身弄ってきたのもあんた!
女と間違えてべろちゅーしてきたのもあんた!」

怒ったらしい、怒声が頭に響いた。

「……なんでそんな目にあっても俺の家で平然と飯食える訳?」

普通なら二度と会わないとか殴るとかするだろうに、やっぱりドMなのか。


高遠が勢いよく立ち上がる。目を手の甲で隠した。

「…………〜〜っれは、 

国雄のことが 好きだからに決まってんだろ!」

「……そう。」

ぼんやり見上げていると高遠の耳が真っ赤なことに気が付いた。子供らしいとこあるではないか。

どういうリアクションを取ればいいやら分からず水を注いで飲んだ。こんなストレートに告白されたのも初めてかも。
いつも体からのお付き合いで何と無く流されて一緒にいたパターンだったから。

呆気に取られていると顔が赤いまま座り直して皿の残りを平らげ始めた。

むせたらしく、水を注いでやった。

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