《MUMEI》

「仕事は?学校は?」

親よりうざったいな。
国雄は屈んで皿を洗いながら聞いてくる。

「今日はオーフ。学校は今から家戻って着替えたら間に合わないからいい。」

今の時期は学校祭だし持て余すだけだ。

「ふーん。友達いなさそ。」

「そっちこそ。独身で犬飼ってるくせに」

首輪とリードとトイレを寝室で見つけた。

「ほら邪魔!掃除するから帰れ!」

寝転がってたら掃除機で足の裏を吸われて蹴られた。蹴った足の親指に黒子がある。確か目の下にも一つ泣き黒子があった。

「……いたたたたたた」

顔面を吸われた。

「ペット飼えば?犬はいいぞ。癒されるし、寂しくない。」

「世話する時間ないし。俺は飼いたいんじゃない飼って欲しいんだ。」

「拾ってくれる人探してて殴られた?」

「違う違う。

それこそ誰しもある間違いだ。
ちょっと失恋したから自棄になって遊び相手探していたの。しかも出会い系で知り合った奴が二人組で粗チンで萎えたから罵倒して逃げたら逆上されただけ。
もう絶対しない。」

「当たり前だ。いつか痛い目見るぞ……」

「もう見てる」

殴られたし、好きになった人は彼氏彼女持ち。

「首の痣、何か言われた?」

首を除いてきた。散々痛め付けておいて。

「見せないようにしてたから。嘘は得意だし。」

「慰謝料請求されたらどうしよ。」

「金持ちのくせに。すぐに使っちゃうとか?」

「俺の稼ぎは女性を喜ばすためのものなの。」

「遊びの金?」

「お客様へのプレゼントとかサプライズとか、あとはどうしても払えない方のツケの肩代わり」

慈善事業だ。ボランティア精神だな。

「老後は、結婚とかしないの?」

「家庭は持たないよ。
女性は愛するより尊んでいたいから。
そうだな、ある程度年齢いったら一人田舎で小さい店開くかな。」

「孤独死じゃん。俺が看取ってやろうか?」

「俺は高いよ。」

威風堂々と胡座をかく。年齢を感じさせない。

「いくら?爺になったら価値下がるんじゃない?」

喉から手が出るほど欲しい、この男を買いたい、独占したい。

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