《MUMEI》

「怪しいよ高遠。マイク充電してきて」

「うええ?そうですかぁ?」

木下先輩に気付かれた。恐るべし天然の勘。新しいマイクと交換する。

木下先輩と内館先輩はまだ喧嘩しているようだ。
木下先輩は俺と他の後輩を率いて体育館の照明音響等を指示しながら頑張っている。


内館先輩は司会進行で壇上に上がりっぱなしだ。

「腹減ったー。」

安西が嘆いている。

「あと少ししたら時間空くから二人ずつ1時間休憩行っていいよ、高遠はまだね。皆帰って来たら東屋と交代ね。」

「分かりましたー」

とは言ったものの歩くのさえ気が進まん。最近、働き過ぎて知名度上がったのでアンパン型の面を被り人通り少ない道を歩く。
携帯開いたら着信にびっちり同じ履歴が入っている。憂鬱だ。

人気ない物置の教室の突き当たり廊下にでかい塊があった。
見間違う筈無い……あのでかい金髪は国雄だ。

「…………今日一人で来たんですか?」

「んー義弟を見にね。」

……目が、合った。は?知り合い?
放送室に急いで引きこもる。

「何、交代?」

「ええ、あ、はい……。」

東屋先輩に不思議そうに見られた。あからさまに態度に出てるからな。変な汗かいてる。


嫌だ、ここに俺が入っていくの見られた。

東屋先輩の出て行ったあと、計算していたようにやって来る。なんですぐ分かるんだろう。
五年は経っているのに。

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