《MUMEI》

「こっちおいで光君」

従兄弟達の中で明らかに浮いている。人見知りで俺が寄るだけで離れて行く。追いかける俺に気が付いて更に歩みを早めたりして、つかず離れずだ。親族は遠巻きにそれを見て笑っている。一応遊んでいるように見えるのか。

光は他の子供より物静かだった。感情も希薄でいつの間にかいたり、一人っ子だからなのだろう隅で一人遊んでたりする。
俺といえば男二人の兄弟で毎日賑やかで片親でも不自由や寂しいなんて一度も考えたことはなかった。
そのせいか、子供らしかぬ光の物憂げな瞳を放っとけなかった。
追いかけっこはしばし続く。追いかけ過ぎて光が転んでしまい、通り掛かった兄貴はすかさず光を起こして傷が無いか見た。

「大丈夫か、怪我無い?」

兄貴達に駆け寄る。

「泣いてないのか、強いな光は。」

兄貴が光の頭を撫でた。

「……泣いてもいいんだよ、光は俺の弟みたいなものなんだから。」

俺が光くらいのときはもっと泣いたり我が儘言った。

「じゃあ俺達は兄弟だな。義兄弟か?」

「おじさんじゃないの?」

まだ10代なのに、胸にぐさりと刺さる。

少しだけど、光と仲良くなれた気がした。

「光、いるの?」

光の母睦美の突然の登場に身が引き締まる。まだ23というのだから十代で光を産んだことになる、全く子持ちに見えない。

彼女の吸い込まれそうな瞳で見られ鼓動は鳴り止まなかった。

憧れなのか、恋なのか俺にはただ彼女のまばゆさに目を瞬かせるばかりだ。

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