《MUMEI》
待ち人
『しつこい』

実に数ヶ月振りの千歳の声だ。
酷く迷惑そうな声色だった。
既に千歳に電話するのは習慣化していて、毎日必ず一回以上はかけていた。

「急にいなくなったりして気になるから。」

『そこは喜ぶところだ』

「理由を聞いてるんだけれど。」

何故急にいなくなったのだろう。

『金がね、要らなくなったから。もう完済したの。』
家も差し押さえされて奥さんにも逃げられる程の借金だったのに。

「……は、自己破産?」

『違う、売った。』

売ったって、そんなもの何も無いだろう。

「まさか、臓器!」

『んな訳あるか、自分で聞け。』

「誰にだよ!」

『…………チッ、小暮国雄にだよ!』


舌打ちが聞こえて、一方的に切られる。
またかけようとしたら繋がらない、着信拒否にされてたようだ。

俺が、売られた?

いつのことだ?

千歳がいなくなってすぐの日か?

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