《MUMEI》 「何が可笑しいんです?」 片眉を上げていて静かに敵意が読み取れた。 「俺達は恋をしていないにしろ、愛しあっていた。心ではなく、身体でね。 中学に上がる頃関係がバレて引き離されるまでは俺が光を育てた。 家族から寿史から守ったのも俺だ。」 一生彼には理解できないだろうけど。 「……あいつは愛に飢えてましたよ。とてもじゃないけど守られていたようには見えなかった。 少なからず恩は感じてるのかもしれないけど、もう俺しか見ていない。 狂ったように俺に愛を乞う。」 彼は平然としていた。 「嫌いなんだろ、顔も見たくないくせに」 鍵を返させて光を突き放したじゃないか。俺とどう違うんだ。 「録画したんです。 二夜連続で高遠光が出ていたドラマ……。 柄にも無く感動してしまって、圧倒された。 その時、今までの高遠光を払拭して変わりに全ての柵から解放してやりたいと、 彼に自由を与えたいと思ったんです。 何にも捕われない未来の彼が知りたくなってしまった。」 目を合わせたくなくて彼の指に付いて離れない煙草を注視する。先は徐々に灰へと変わっていく。俺は、光が映像になっているのを見てどう考えた? 淋しい?まさか。 そうじゃない。 あれをまた調教しなければ、縛らなければと思った。だから再教育させなければならなかったのだ。 俺を忘れるなんて許さない……。 「自由とはなんなのかな。」 「貴方から解放されることです。」 彼は実に単純な言葉を吐いた。 「光を傷付けたのはお互い様だろう。あの時俺が光を慰めてなかったら自殺していたかもしれない。 光は俺のモノだよ。」 小さな手が握り返してくれたその日からずっと。 前へ |次へ |
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